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派遣先での温かいエピソード

 僕は今から10年ほど前、人材派遣の仕事をしたことがある。今では人材派遣というとソフトウェア開発、パソコンやOA機器の操作、CAD、製造業全般、医療関係が多いが、10年も前は、そういった派遣はなかった。
 僕が従事した人材派遣は塾の講師。僕は塾の講師をアルバイトではなく正社員や専任講師の待遇で働きたかったが、募集がかなり少なくて難しかった。
 そんなとき、塾講師の派遣を行っている会社を見つけた。その会社から派遣で学習塾に赴き、経験を積めば派遣先に専任の職員で迎えてくれたりもするという。
 僕はさっそく応募し、無事に採用され、とある学習塾に派遣された。校舎を都内にいくつも持っている大手の進学塾で成績の良い小中学生が集まっていた。なんでも専任の先生が交通事故で腕を骨折し、3ヶ月ほどの期間限定での臨時講師だった。僕は算数・数学・理科を受け持った。中学受験の算数はとてつもなく難しく、十分な予習をしないと解けなかったりするレベルだった。
 そしてクラスを受け持って数週間たった頃、小学5年生の男の子に灘中の難問を質問された。

    兄が小6で受験なのだが、どうしても解けない問題があるらしい。兄はよその塾に通っているが、そこの先生も分からないらしく両親も解けなくて困ってるとのことだった。
     僕は家に持ち帰って解いてみたが当然のごとく解けない。解き方さえ分からない。翌日、塾の先生に算数の参考書を何冊か借りた。翌日にはその子に解き方を書いたメモを渡さねばならないので時間はなかった。参考書で類題を見つけ、それをヒントに試行錯誤して4時間、なんとか
    解くことができた。時間は午前3時を過ぎていた。図解入りで解き方をメモに書いて完成したのが午前4時。
     その日、小5の子に渡すと、その子はとても喜んでいた。
     翌週、その子の授業がある曜日、その子と母親が職員室に訪ねた。おかげで問題の解き方が理解できたらしかった。お礼にと言ってルシアンケーキの詰め合わせを持ってきた。
     僕は他の先生方にごちそうさまと言われたり、がんばったねえなどと褒められたりしてなんだか暖かい嬉しい気持ちになった。
     このときの努力が良かったのか、室長にも気に入られて、室長の推薦で、3ヶ月後にこの学習塾の別の教室に専任音職員として無事採用してもらえた。

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